肺高血圧症の病態の解明、診断能と治療成績の向上、および治療指針の確立をはかり、貢献することを目的として活動を行っております
平出 貴裕(慶應義塾大学医学部循環器内科)
「潰瘍性大腸炎治療薬の青黛が肺動脈性肺高血圧症を惹起するメカニズムの解明と新規肺高血圧症モデル動物の作成」
肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension; PAH)は生命予後不良の難治性稀少疾患であるが、発症メカニズムの多くは不明であり、根本的な治療法に乏しい。発症機序の解明および新規創薬において動物モデルの果たす役割は大きいが、Sugen 5416皮下注射と低酸素刺激を組み合わせて作製する肺高血圧症モデルラットは低酸素負荷が必要であり、作製に3-4ヶ月ほどの時間を要する(Abe K, et al. Circulation. 2010;121:2747–2754)。常酸素下でのより生理的かつ短期間での肺高血圧症モデル動物作製が実現できれば、PAH領域の基礎研究の発展に大きく寄与できる研究成果である。
被推薦者の研究チームは、薬剤負荷PAHモデル作製において、生薬である青黛(せいたい)に着目した。青黛は植物から抽出したインジゴを含む生薬で、藍染めの染料として用いられてきた。青黛は潰瘍性大腸炎の患者において腸の炎症を抑制する作用があり、前向き臨床試験においても抗炎症作用が示された(Naganuma M, et al. Gastroenterology. 2018;154:935–947)。しかし、青黛は生薬であるため自己購入が可能であり、医師の指導外で青黛を過剰に摂取した患者において、PAHを副作用として発症したとの症例報告がなされた(Nishio M, et al. Eur Heart J. 2016;37:1992)。本研究では青黛の過剰摂取がPAHを惹起するメカニズムを解明することを目的とした。また青黛含有食をモデル動物に摂取することで、従来よりも簡便にPAH動物モデルが作製可能か検証を行った。
① 青黛はAhRシグナルを介してPAHを発症することを解明
3週齢のFisher 344オスのラットを用いて実験を行った。正常食(CE-2)、潰瘍性大腸炎患者の治療量の10倍に相当する4%青黛含有食を常酸素下でラットに経口投与した。4%青黛含有食を12週間投与したラットにて右室と肺動脈のリモデリングを認めた(下図)。
ラットの肺組織を調べると、芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor: AhR)の下流であるチトクロームP450(CYP1A1)の発現量が上昇していた。青黛にはAhRのリガンドが多く含まれており、AhRシグナルがPAHを惹起する可能性が示唆された。12週間ラットに4%青黛含有食を摂取し、最後の2週間AhRアンタゴニスト(CH223191)を経口で追加投与したところ、CH223191を投与していないラットと比較し有意に右室と肺動脈のリモデリングが改善していた(下図左)。
AhRシグナルがPAH発症の原因であることを同定し、新規のPAH治療薬開発のターゲットとなりうることを報告した(Hiraide T, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2021;203:385–388)。
② 常酸素下でのPAHモデル動物の作製に成功
より生理的で短期間なモデルを作製するため、day 0にVEGF受容体阻害薬(SU5416)皮下注射を行い8週間4%青黛含有食を摂取すると有意なPAHの所見を認め、CH223191を追加投与することでPAHが軽快した(上図)。より簡便なPAHモデル動物の作製により、今後更なるPAHの基礎研究に貢献できる成果である。
③ 臨床知見から基礎研究:reverse translational researchの実践
本研究は青黛を摂取した患者に副作用としてPAHが発症した臨床知見から、PAHの発症原因としてAhRシグナルを同定した、reverse translational researchとして価値の高い研究である。AhRシグナルは免疫や細胞増殖に関連する因子であり、新規治療法開発のターゲットとして根治療法に向けた創薬が今後期待されている。
左図:Hiraide T, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2021;203:385–388より引用
右図:慶應病院のKOMPASより引用
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/science/202102.html
青木 竜男(国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門肺循環科)
「慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術後の薬物療法の意義」
肺高血圧症の一病型である慢性血栓性肺高血圧症(CTEPH)は、予後不良の疾患であったが、近年、疾患概念が知られるようになり、診断のタイミングが早まった事や、治療法が確立された事により、予後が改善している。一方で、外科的治療法として確立している血栓内膜摘除術(PEA)後の残存肺高血圧症に対する治療法の選択やバルーン肺動脈形成術(BPA)後に残存する症状への治療法のエビデンスは限定されており、未解決の問題も残されている。
非手術適応のCTEPHの治療は、BPAの他に肺血管拡張薬(リオシグアト)が挙げられる。リオシグアトは、CHEST-1 studyにおいて運動耐容能と血行動態を改善する事が明らかになったが(N Engl J Med 2013; 369:319-329)、BPAにより血行動態が改善した症例におけるリオシグアト継続の意義は明らかではなかった。私は、BPAを施行した症例におけるリオシグアトの効果を検討するために、BPA終了後の症例をリオシグアト内服群とコントロール群の2群にランダムに割り付け、運動負荷右心カテーテルを施行し、運動に対する血行動態の反応を評価した。
本研究で行った運動負右心カテーテル検査は以前から行われている検査であり、肺動脈内にカテーテルを挿入したまま、運動を行い結構動態の反応を見る検査である。以前は、運動時の肺動脈圧が30mmHgを超える症例を運動誘発性肺高血圧症と診断していた。しかし、肺動脈圧は健常人でも心拍出量の上昇とともに上昇するため、2008年の肺高血圧症のシンポジウムで運動誘発性の肺高血圧症は削除が決定された。以後、臨床で運動負荷右心カテーテルが積極的に行われることはなかったが、近年、軽微な肺血管床の異常を検出するために有用である事を示唆する研究が発表された(Eur Respir J 2015;46:728-737)。新たな運動負荷右心カテーテル検査では、運動中に平均肺動脈圧(mPAP)と同時に直接Fick法で心拍出量(CO)を測定し、心拍出量の上昇に対する肺動脈圧の上昇率を計測し(mPAP-CO slope)、その傾斜の大小で肺血管床の状態を評価する。2018年にニースで行われたシンポジウムでも、運動負荷右心カテーテルの重要性が再評価され、慢性肺血栓症の診断に利用することが推奨され、mPAP-CO slopeが3を超える場合、肺血管床に何らかの異常を有するとされた(Eur Respir J 2019;53:1801913)。
私の研究では、BPAを施行することで肺血管拡張薬未使用でも肺動脈圧が30mmHg未満、WHO機能分類1-2度の症例を対象とした。対象症例は21例で、ベースラインの年齢、性別、安静時の肺動脈圧を用いて、コントロール群11例、リオシグアト群10例にランダムに割り付けを行った。ベースライン時および割り付けの3か月後にカテーテル検査、心臓MRI、CPXおよび6分間歩行検査を施行し、リオシグアトの効果を評価した。ベースラインの安静時の血行動態は、平均肺動脈圧(コントロール群 25 ± 4 vs. リオシグアト群 25 ± 5 mmHg)、心拍出量(4.0 ± 1.0 vs. 3.9 ± 1.1 L/min)ともに2群間で有意差を認めなかった。ベースライン時の運動負荷右心カテーテルにより得られたmPAP-CO slopeはコントロール群とリオシグアト群でそれぞれ7.2 [6.4, 16.9]と14.5 [7.8, 14.7]とリオシグアト群で大きかったが統計学的には有意差を認めなかった (P = 0.46)。6か月後のfollow-upでは、安静時の血行動態、運動耐容能、右心機能は両群で有意な変化を認めなかったが、リオシグアト群では、mPAP-CO slopeは14.5 [7.8, 14.7] から6.41 [5.1, 11.4]に有意に改善した(P < 0.01)。一方で、コントロール群のmPAP-CO slopeは7.2 [6.4, 16.9]から8.4 [6.8, 12.0]と有意な変化は認められなかった(図)。
本研究では、BPA後に安静時の血行動態が改善した症例でも、運動負荷右心カテーテルにより測定したmPAP-CO slopeの値は高値であり、肺血管床の異常が残存していることが示唆された。また、BPA後のリオシグアト投与は、付加的に安静時の血行動態や運動耐容能を改善することはなかったが、運動に対する血行動態の反応を改善した。今回の研究は小規模かつ短期間の検討であったため、長期的にリオシグアトを投与した場合の右心機能に対する効果や、リオシグアトに対するresponderの予測などが今後の検討課題と考えられる。これらの結果は、2019年の日本肺高血圧・肺循環学会学術集会にて発表し、2020年にInternational Journal of Cardiology Heart and Vasculatureに掲載された。
私はこれまで東北大学循環器内科で肺高血圧症に関する研究を行ってきた。BPAが血行動態及び長期予後を改善する事を明らかにし、論文で発表している(Aoki T, Shimokawa H et al. Eur Heart J. 2017;38:3152-3159.)。また、BPAがCTEPH患者の酸素化を改善する機序を、肺内シャント量の変化に着目し、論文として発表している(Aoki T, Shimokawa H et al. Circ J. 2016;80:2227-34.)。現在は国立循環器病研究センター肺循環科に所属し、肺高血圧症の臨床に携わりながら、臨床研究を継続している。2020年の日本肺高血圧・肺循環学会及び日本循環器学会の総会では、PEA後の残存肺高血圧症に対するBPAの効果に関する研究を発表し、現在論文を作成中である。また、現在はCOVID-19の流行下における肺高血圧症の遠隔診療の有用性について研究を行っている。
福満 雅史 (国立循環器病研究センター 循環動態制御部)
「数理循環モデルを用いた肺高血圧症における右室力学的負荷の包括的解明」
肺高血圧症は、肺血管の狭窄・閉塞によって肺動脈圧の上昇をきたす予後不良の疾患である。その病態は慢性的な力学的負荷によって引き起こされる右心不全であり、患者の生命予後は右心不全の程度によって決まる。それゆえ、肺高血圧診療においては、右室への力学的負荷を正確に評価する必要がある。一方、最近の報告で、代表的な血管指標である肺血管抵抗(PVR)や動脈コンプライアンスは、必ずしも全ての右室負荷を説明できるわけではないことがわかっている(Am J Resipr Crit Care Med. Ruigrok et al. 2019)。
体内の血流は拍動しており、拍動性もふまえた正確な肺血管特性の変化は、水力学的な抵抗値である血管インピーダンスによって計算される。なお、血管インピーダンスは、電気的抵抗値のインピーダンスとは異なるので注意されたい。血管インピーダンス(以下インピーダンス)は周波数ごとにみた血管抵抗値であり、この場合、0Hz(非拍動)のインピーダンスはPVRに相当する。解釈が難しいといわれるインピーダンスであるが、ウィンドケッセルモデルなどの数理循環モデルに当てはめることで、近位血管や末梢血管の抵抗値、動脈コンプライアンス、さらには反射波などにパラメータ化でき、その理解は格段に容易なものとなる。申請者は、インピーダンスのパラメータ化を行い、心臓力学の立場から、肺高血圧における右室後負荷の包括的解明に向けた前臨床研究や臨床研究(提出論文)を行ってきた。
① インピーダンスの計測方法の検討
インピーダンスは、肺動脈の血流波形と血圧波形のセットをもとに計算される。肺循環の下流に位置する左房圧は、肺動脈圧と比べて無視できない大きさであるが、申請者らの検討により、左房圧の波形は拍動性が乏しく、インピーダンス測定精度に影響を及ぼさないことが分かっている(Physiol Rep. Fukumitsu et al. 2018)。
② 肺高血圧モデル動物のインピーダンス解析
前臨床の検討として、モノクロタリン誘発性肺高血圧症モデル(Ame J Physiol. Fukumitsu et al. 2016)や急性肺塞栓症を模擬した動物モデル(Circ J. Fukumitsu et al. 2016)のインピーダンス解析により、血管の障害部位の違いでインピーダンスが異なることが明らかとなり、インピーダンスは血管の解剖学的情報を反映する可能性が示唆された。これをもとに、インピーダンスをより簡単に日常診療へと応用できるよう、反射波に着目した検討を行った。反射波は、力学的に低いインピーダンス(正常血管)から高いインピーダンス(病変部)に移行する部位で生じる。この理解をもとに、SU5416・低酸素誘発性肺高血圧ラットを用いてインピーダンス・反射波ならびに病理組織の経時的な変化を調べた。その結果、肺高血圧が進行するにつれて反射波は増大し、反射波の大きさは肺血管細動脈の狭窄率と極めて高い相関関係にあることが分かった(Int J Cardiol. Fukumitsu et al. 2017)。
③ 肺高血圧患者における早期反射波の右室後負荷としての意義
上記知見を踏まえて、申請者はオランダ・アムステルダム大学(Prof. Anton Noordegraaf)に渡り、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者を対象とした臨床研究を行った。これまでの同大学の研究で、近位部に血栓塞栓を有する患者(近位部CTEPH)は、末梢部に血栓塞栓を有する患者(末梢部CTEPH)と比較して、右室機能が低下することが分かっていた。興味深いことに、これらの違いは、従来の後負荷の指標、すなわちPVRや動脈コンプライアンスでは説明がつかなかった。そこで、申請者らは、「PVRでは説明つかない新しい右室後負荷」として、異常なインピーダンスによって生じる反射波、特に反射波が右室に戻ってくるタイミング(反射時間)に着目した。右室に戻ってくる反射波は右室圧を上昇させるが、このとき、右室の力学的ストレス(壁張力)は右室の圧とサイズ(径)によって決まることから、右室のサイズがより大きな収縮早期に戻ってくるほど、右室壁張力は容易に上昇しやすい。実際に、CTEPH患者の反射波を測定すると、近位部CTEPH患者は、末梢部CTEPH患者を比較して、PVRや動脈コンプライアンスは同等であったが、より早期に反射波が戻ってくることが明らかとなった(Ame J Physiol. Fukumitsu et al. 2020)。さらに、この反射時間は、右室壁張力のピーク値と有意な相関を認めており、右室拡張末期容量や右室駆出率、右室重量と有意な相関を有していた。早いタイミングで反射波が戻ってくるほど、右室に大きな力学的負荷がかかり、右室拡大や右室肥大、右室駆出率の低下につながることが示唆された。
これまで、早期に戻ってくる反射波は、右室流出路血流波形の「ノッチ」の存在として注目されていたが、その病態生理学的意義は明らかでなかった。本研究により、早期反射波が「PVRでは判別できない新たな右室後負荷」となりうる生理学的根拠が示された。今後、早期反射波に着目した手法が新しい診療・研究アプローチをもたらしてくれると期待する。
本研究は、欧州呼吸器学会リサーチフェローシップ(European Respiratory Society short-term fellowship)による助成を受けて行われた。
守山 英則 (慶應義塾大学医学部循環器内科)
「肺高血圧症における右室局所機能解析の有用性と臨床的意義の解明」
(1) 研究の背景
肺高血圧症における右室機能は重要な予後規定因子とされる一方で、右室機能の役割や病態生理の解明は未だ不十分とされる。「McConnell徴候」で知られる通り、圧負荷を受けた右室の機能や反応性は、その局所で大きく異なることが予想されるが、右室局所に焦点を当てた機能解析は技術的な限界からこれまでほとんど行われてこなかった。特に右室流出路は、その一部が発生学的に異なる起源を有し遺伝子発現パターンも大きく異なる異質な存在であるにも関わらず、従来の心エコー図指標では評価困難な無視された存在であった。
そこで私は、右室流出路を含めた右室全体の機能評価が可能な「右室3次元スペックルトラッキング法」という心エコー図の新技術に注目し、肺高血圧症患者における右室の局所機能評価、およびその臨床的意義の解明を試みることとした。
(2) 肺高血圧症における右室局所壁運動異常の存在と、右室3次元スペックルトラッキング法の有用性
申請者らは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、右室3次元スペックルトラッキング法によってのみ右室機能異常を検出し得た症例を世界で初めて報告した(第3回日本肺高血圧・肺循環学会学術集会で演題発表、Circ Cardiovasc Imaging. 2019)。本例では、右室心尖部の一部から右室流出路にかけて限局した局所壁運動異常が存在したため、心尖部4腔像で評価する従来の右室機能指標や2次元ストレイン値はすべて正常値となり、その異常所見を捉えることはできなかった。本報告により、肺高血圧症における右室局所壁運動異常の存在と、3次元スペックルトラッキング法の有用性が示唆された。
(3) 慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症における3次元スペックルトラッキング法による右室機能評価の有用性と局所壁運動異常の臨床的意義
次に、右室3次元スペックルトラッキング法が肺高血圧の評価として有用なツールとなり得るかを検証するため、バルーン肺動脈形成術(BPA)を施行した慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者29名を対象に、3次元スペックルトラッキング画像を作製し、3次元ストレイン値と右心カテーテル指標および6分間歩行距離との相関を検証した。その結果、3次元ストレイン値(右室面積変化率Global ACR [area change ratio])は、従来指標(TPASE, RV S’, RVFAC)よりも平均肺動脈圧、肺血管抵抗値、6分間歩行距離の改善度と強い相関を示し、肺高血圧の重症度を鋭敏に反映する有用な指標であることが示唆された。また、右室局所機能の臨床的意義を検証するため、右室を流入路(Inlet)、心尖部(Apical)、流出路(Outlet)の3部位に分割し、それぞれ3次元ストレイン値を算出すると、流入路ACRが血行動態と最も強く相関し、Global ACRの代用となり得ることが明らかになった。一方で、流出路機能は血行動態との相関が悪いだけでなく、他部位よりもBPA治療後の機能回復が遅延するという特徴的な経過を辿った。治療遠隔期の流出路ACRは心筋障害マーカーと相関を示し、右室リバースリモデリングと関連していた。
以上の結果より、右室3次元スペックルトラッキングはCTEPHにおける右室機能評価のための有用な技術であり、右室局所によって特徴的な圧負荷応答を有することが明らかとなった。(J Am Heart Assoc. 2020)
(4) 肺動脈性肺高血圧症における右室局所機能障害とその予後
続いて、PAHにおける右室3次元スペックルトラッキング法の応用可能性と局所機能解析の臨床的意義について検証した。その結果、PAH患者においてもCTEPH患者と同様に、Global ACRおよびInlet ACRが従来指標よりも平均肺動脈圧、肺血管抵抗値と良好な相関を示し、適用可能であることが明らかとなった。さらに、流出路機能の臨床的意義を検討するため予後との関連に注目すると、流出路機能が不良な患者では、その後の長期予後(2年全死亡+心不全入院)が有意に悪化しており、RVEFよりも強い予測因子であることが分かった。(論文投稿中)
以上より、肺高血圧症において右室3次元スペックルトラッキング法を使った右室局所機能評価の有用性の一端が解明された。今後さらなるエビデンスを積み重ね、肺高血圧診療に欠かせない指標としての発展を目指していきたいと考えている。