肺高血圧症の病態の解明、診断能と治療成績の向上、および治療指針の確立をはかり、貢献することを目的として活動を行っております
本学会の成立にあたり、まずは東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学教授 下川 宏明先生、慶應義塾大学医学部 循環器内科学教授 福田 恵一先生のご尽力に敬意を表します。
下川 宏明先生は肺循環に関る多彩な分野の多くの研究者・医療者が参加し、情報交換、共同研究を行える場を提供したいと「日本肺循環学会」設立のために奔走くださいました。福田 恵一先生は肺高血圧症ワールドシンポジウムから発信される先進的な研究成果を前に、日本でも領域横断的な多施設連携による研究体制の整備が急務と「日本肺高血圧学会」設立のために奔走くださいました。
おふたりの先生の熱意とご尽力を礎に、両学会をさらに発展させるために選ぶ道について、日本中の研究施設・医療機関の多くの方々の模索、熟考が続きました。
2014年10月、第3回日本肺循環学会(学会長 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科教授 伊藤 浩先生)・第2回日本肺高血圧学会(学会長 千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学 教授 巽 浩一郎)において、両学会を合同学術集会として開催しようという試みがなされました。
「Pulmonary Hypertension ~Inspire the Next~ 多分野融合による症例蓄積から未来へ向かって」というテーマのもと、循環器内科、呼吸器内科、膠原病内科、小児循環器、心臓血管外科、放射線画像診断、肺移植など、臨床の現場で肺高血圧症を含む肺循環障害の診療にあたる先生方、研究に取り組む方々にご参集いただき、最新の知見が提供され、分野を越えての議論が展開されました。加えてその熱い会場で、肺高血圧症を初めとした肺循環疾患に対し、「オールジャパン」で臨もうという方針がおのずと示され、多くの先生方から賛意が寄せられました。
その賛意は2015年10月開催の第4回日本肺循環学会(学会長 東邦大学医療センター大森病院小児科教授 佐地 勉先生)・第3回日本肺高血圧学会(学会長 藤田保険衛生大学リウマチ・感染症内科教授 吉田 俊治先生)合同学術集会に引き継がれ、テーマ「Pulmonary Vascular Diseases:Education, Experience, and Evidence ~学会の融合から始まる学際的な発展~」のもと、たいへん有意義で、実りの多い会へとつながっています。
先進的な研究成果を可能としている海外には、こうした難治疾患に対して国レベルでのレジストリー登録システムがあり、診療・研究が一体になった強力な体制構築がなされています。そうしたシステムに追いつき、「オールジャパン」で世界に挑もうという機運が高まり、東京女子医科大学 教授 中西 敏雄先生のリーダーシップのもと「学会あり方委員会」が組織され、日本肺高血圧・肺循環学会の設立に向かい準備が進みました。
そして2015年10月2日開催の合同理事会において、両学会の統合、新学会運営に関する基本方策の合意が成り、日本肺高血圧・肺循環学会誕生に至った次第です。
我が国における肺高血圧症の研究を振り返ったとき、厚生労働省より委託されて構成された『班』を中心にして、国内で実績のある研究施設・医療機関が参加し成果を積んできたといえましょう。1975(昭和50)年、慶應義塾大学医学部呼吸循環内科の笹本 浩教授を班長とした厚生省特定疾患「原発性肺高血圧症」調査研究班から始まり、1978(昭和53)年からの厚生労働省「呼吸不全に関する調査」研究班、1982(昭和57)年からの「混合性結合組織病(MCTD)調査」といった歩みがあります。それぞれの班を率いた班長の強力なリーダーシップ下でまとめられた成果はわたしたちの財産です。その財産を土台に、次代に向け、さらに研究の成果を発展させるミッションをわたしたちは負っています。ここにあらためて学会を組織し、日本国中の経験豊かな人材からフレッシュな才能まで、多領域にわたって広く多くの会員を得ることで、「オールジャパン」の取り組みが可能になることを願っています。
このたび日本肺高血圧学会、日本肺循環学会、ふたつの学会が統合され、あらたに『日本肺高血圧・肺循環学会』という名のもとに発進いたします。
『日本肺高血圧・肺循環学会』の誕生は日本の肺高血圧症領域の臨床家/研究者が一つにまとまる画期的なできごととなります。肺高血圧症をはじめとする肺循環障害に「オールジャパン」で取り組もうとする両学会員の強い思いが、この統合を成らしめ、今後日本における肺高血圧症の研究を牽引して参ります。
さて、肺高血圧症は多種多様な病態が含まれる疾患群です。そして、肺高血圧症を含む肺循環障害の発症機序は不明、病態もまだまだ未解明というのが現段階です。治療に関しては肺移植、肺動脈性肺高血圧症に対する肺血管拡張療法、慢性肺動脈血栓塞栓症に対する手術およびバルーン肺動脈拡張療法など、患者予後の改善は得られつつありますが、適用症例の選択や治療法に関しての均霑化は途上です。
世界をみれば、2013年2月に開催された第5回の肺高血圧症ワールド・シンポジウム(ニース会議)の臨床分類が発表され、その後まもなく2015年にERS/ESCから肺高血圧症の診断と治療に関するガイドラインが上梓されるといったように、この領域における展開の早さには驚かされるばかりです。
日本において肺高血圧症を含む肺循環障害の治療、臨床研究・基礎研究をさらに進めるためには、症例の詳細な検討、症例の蓄積、そして”未知の病態“にチャレンジする活力が必要です。循環器内科、呼吸器内科、膠原病内科、小児循環器、心臓血管外科、呼吸器外科、放射線科など、領域を超え肺高血圧症の治療・研究に取り組む臨床家/研究者のみなさまに多数ご加入いただき、本学会を最新知見の交換の場、自由な議論のできる場としていただくことを願っています。領域を超えて日本の臨床家・研究者が一体になり世界へ立ち向かえる体制をつくってゆきましょう。 ”未知の病態“にチャレンジし、優れた研究成果を世界に発信して参りましょう。
本学会の初代理事長として指命されたわたくし巽、副理事長瀧原 圭子教授、桑名 正隆教授、あらためて会員みなさまとともに、日本肺高血圧・肺循環学会の発展のために力を尽くす思いでおります。なにとぞご理解、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
この度、巽浩一郎先生の後任として日本肺高血圧・肺循環学会の理事長を拝命いたしました。本学会は日本肺循環学会と日本肺高血圧学会という二つの学会を前身とし、2016年に両学会が統合されて誕生しました。その経緯は学会ホームページの『日本肺高血圧・肺循環学会』発足まで、に詳しく述べられている通りです。
患者さん、肺高血圧症に関わる医療者や研究者にとって最善は何かを考えた、両学会の皆様のご英断とご尽力の結果誕生した本学会の理事長を担当させていただくこと、光栄に存じますとともに大きな責任を感じています。
本学会は難治性疾患である肺高血圧症の病態解明や適切な診断方法の確立、新たな治療法の開発をめざして、領域横断的に循環器内科、呼吸器内科、膠原病内科、小児循環器科、心臓血管外科、呼吸器外科、薬理学、病理学などの専門家、コメディカルの分野で活躍される方々が参加され、オールジャパンの体制で肺高血圧症制圧に取り組む特色のある学会となります。
肺高血圧症の中で、慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)治療では、日本の臨床医・研究者が世界をリードしています。同様に新たな治療薬や治療法を日本から発信し世界の肺高血圧患者の治療に貢献できるよう、患者レジストリをはじめとする国内体制の整備を進め、学会賞を通じた若手研究者の育成や研究支援に取り組んでまいります。
会員の皆様には本学会を最新研究成果の情報共有や自由な議論を通じた情報交換・ネットワーク形成の場として活用いただくことを願っています。
これから2年間、微力ですが日本肺高血圧・肺循環学会のさらなる発展のために力を尽くす所存です。引き続きご理解、ご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。