肺高血圧症の病態の解明、診断能と治療成績の向上、および治療指針の確立をはかり、貢献することを目的として活動を行っております

本学会について

学校心電図検診の小児IPAH早期診断における有用性

学校心電図検診(以下、学校検診)の特発性・遺伝性肺動脈性肺高血圧(I/H-PAH)早期診断における有用性を日本小児循環器学会の研究グループ(研究代表者:三重大学医学部 三谷義英)が全国調査により証明しました。(Sawada H, Mitani Y et al. Am J Respir Crit Care Med 2019, 199: 11: 1397-1406)

小児I/H-PAHの予後は、治療薬の開発により、5年生存率は約75%と改善しています。近年の研究によりI/H-PAH早期診断治療の有用性が示されていますが、早期診断法に関しては過去20年以上進歩に乏しいことが課題とされています。我が国の学校検診では、1995年から、全国の小学校・中学校・高校の1年生全員に心電図検査が義務化されています。学校検診を通じI/H-PAH患者が診断されることが知られていましたが、同検診のI/H-PAH早期診断における役割は不明でありました。

研究グループでは、2012年~2015年にかけて18歳以下のI/H-PAH患者を対象に全国調査を行いました。その結果、6歳以上のI/H-PAH患者の41%が学校検診を通じて診断され、学校検診により診断された患者は、有意な肺動脈圧上昇を認めるが、症状の軽い(低いWHO機能分類クラス、低いBNP、長い6分間歩行距離)患者であり、エポプロステノール持続静注の必要性が少ないことが分かりました。また、診断年齢の分布では、学校検診を受ける年齢に一致した患者数のピークを認め、診断への影響を示す結果でありました。また、日本小児循環器学会修練施設の小児IPAH患者の5年生存率は、84.8%と国際的にトップクラスである事も同時に示されました。

本研究から、今後、学校検診の心電図判読の向上による早期診断の進歩や、日本独自のシステムである学校心電図検診の日本以外での議論と普及、より早期のI/H-PAH診断法の開発に向けた研究への展開が期待されます。

本研究成果は、2019年6月1日、米国胸部学会(American Thoracic Society, ATS)の学会誌であるAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌に掲載されました。本研究は、日本小児循環器学会学術研究補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究事業補助金の支援を受けて行われました。

Journal Homepage:
掲載論文: https://www.atsjournals.org/doi/full/10.1164/rccm.201802-0375OC
Editorial: https://www.atsjournals.org/doi/full/10.1164/rccm.201812-2314ED
PubMed: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30428270